同期会の後、真央と二人で居酒屋に入った。このところ、ひらめと真央と頻繁に飲んでいる。
「ひらめくん。最近、仕事頑張ってるらしいじゃん?」
「そんなことはない。ぼちぼちだよ。誰、情報?」
「野田くん。さっき『何でひらめなんだ〜』って騒いでたよ」
野田は、ひらめと同じ職場の同期で何かとライバル心を剥き出しにして、ひらめにからんでくる。
「要領よくこなしてるだけだよ〜」
「なんだ、やる気になったのかと思った」
「全然だよ。まだまだ何もできない」
「なんかなあ〜。少しやる気出したら?」
「う〜ん・・・。誰かとエッチなことすれば、やる気が出るかもしれない・・・」
「変態っ! 今の話題のどこから、そこに飛躍するのか、頭の中見ていたいわ」
「仕事の話は止めよう。つまんない」
「こんな変態でも、人気があるから不思議だよね」
「・・・」
真央が、前髪で隠れているひらめの顔を覗き込む。
「さやかに猛アタックされてるんだって?」
「情報がはやいね。見てた?」
「恭子。さっきメールで・・・」
「う〜ん・・・。今度、二人で飲んで確かめるよ」
「女子と二人で飲みに行くの?」
「普通でしょ? 今だって真央さんと二人だし・・・」
「真央とさやかは違うでしょ?」
「えっ? 何が違う? 一緒でしょ?」
真央が驚きの表情で、ひらめを見る。
「ごめん、真央さん・・・。言い方が悪かった。真央さんとさやかちゃんは違う。全然違うよ・・・。だけど、俺からしたら、どっちも友達じゃん?」
「うん・・・」
「友達だったら遊びに行くでしょ? 断わらないでしょ? そういうことなんだよ」
「うん、分かる。分かるんだよ。でも、ひらめだけ・・・。なんか腹が立つ・・・」
「・・・」
「真央だって女の子だから、たまには男子に甘えたいときがある・・・。ぎゅーってしてもらいたいときがあるんだよ。でも、甘える相手がいないから甘えられない・・・。そんな葛藤があるんだよ」
「俺と付き合ったら、いつでも抱きしめてあげるよ・・・」
「・・・考えておく」
「何それ?」
「なんか、軽いんだよ」
「・・・」
「真央は、今のひらめとの関係は悪くないと思う」
「・・・」
「真央はしばらく彼氏はいらない。そして、お互い恋人がいないから、ひらめと会っている。もし、ひらめが彼女が欲しくなったら、真央に気にしないで作ればいい。真央は、反対できる立場じゃない。だから、ひらめの好きにすればいい」
「分かった。もういいよ。終わりにしよ。俺も真央さんとは今の関係でいい。終わり」
「そうやって直ぐ逃げる」
「逃げてねーし・・・」
「友達と彼女って何が違うの?」
「セックスするか、しないかだよ」
「ひらめは真央のカラダが目的なの?」
「それだけじゃないけど・・・。もういいよ。終わりにしようよ」
「逃げるな、ひらめ。お前は彼女じゃないとセックスしないか?」
「そんなことはない・・・ね」
「でしょ? 真央だって付き合う前にしちゃうかもしれない」
「えっ? じゃ、今からホテ・・・」
「無理。変態!」
「終わりにしようって言ってるのに、真央さんが続けてんじゃん・・・」
「彼女と友達って何が違う?」
「なんか、あるじゃん・・・。彼女だったら、他の誰かに取られたくないとか・・・」
「そんなのは、今でも一緒だもん・・・。ひらめが他の女子と遊びに行くのは、嫌な気分になる・・・」
「真央さん、それって俺のことが好きなんじゃ?」
「うん。好きだよ。でも彼氏の好きとは違う」
(本当に面倒くさい・・・)
「まあ、真央さんが、俺といて楽しけりゃいいよ。少なくとも俺は今でも十分楽しいしね」
「でしょ? 真央もひらめと一緒にいて楽しい。だから、今の関係で良いと思うんだ。ただ、ひらめに彼女ができたら、ちょっと寂しい気がする。きっと嫉妬する・・・。でも、真央にはそれを止める権利はないんだよ」
「じゃ今日はホテルに泊ま・・・」
「無理。それにお金ないって言ってたじゃん」
「そこはどうにかするよ。迷惑かけないから、すぐ逝くし、三秒、いや二秒・・・」
「それじゃ真央、逝けないじゃん?」
「えっ?」
「えっ?」
顔を赤らめる真央。
(かわいい・・・)
「ヤバい。完璧にひらめのペースじゃん」
「待て待て。真央さんが勝手にスケベな妄想してるだけでしょ?」
「・・・」
本気なのか、冗談なのか、分からないけど、こんなバカな話をできる関係も悪くない・・・。
「いつも、そうやって女子を騙してるの?」
「聞き捨てならん。俺がいつ、女子を騙した?」
「ズルいよね。いつもそうやって自分は悪くないみたいな・・・。勘違いをさせておいて・・・」
「えっ? 俺?」
考えてみたら、ひらめも真央が他の男と仲良くしていたら嫉妬すると思う。
彼女でもない友達なのに・・・
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