平成サバイブ 第一一話「無能だと分かっているから、仕事を断る」

平成サバイブ

ひらめの先輩が体調不良で戦線離脱をするらしい。

「うん、大丈夫だよ。心配しなくても、どうにかするから、しっかり治すことに専念しろよ」
「ご迷惑をおかけします。これが、今までの資料で・・・」

「大竹さん・・・。大変すね? 俺でも役に立つんなら言ってくださいね」
「サンキューな、ひらめ。大丈夫だよ」

無能な新人が手伝えることなんて、たかが知れている。
何も手伝えることなんてないと知りながらも、ひらめは、なんとなく声をかけた方が良いような気がした。

「ひらめ、石田を探して来い」
「石田さん、午前中はお客さんと打合せ・・・です」

「そうか・・・。石田、橋爪、田所に午後イチ、会議室に集まるように伝えてもらえるか?」
「第三会議室、取っておきます?」

「そうだな。後は・・・。部長と本部長にも参加できるか聞いてくれ」
「は〜い。行ってきま〜す」

新人が出来ることなんて、人を集めることくらいだ。

用事を全て片付けて、いつものように、ひらめは給湯室の井戸端会議に参加する。

ここにイチバン社内の情報が集まるのを知り、誰かがいる時は顔を出すことにしている。

「ねえ、ひらめくん。竹ちゃんのプロジェクト、誰がやるか聞いた?」
「う〜ん。石田さんかな? 後、橋爪さん、田所さん・・・が呼ばれてた」

「竹ちゃんの仕事、結構大きいから、浅見さんとか入るかと思った・・・」
「浅見さんって、あんまり話したことないんだけど・・・。仕事できるんすか?」

「石田さんが新人のときの教育係。課長候補だよ」
「ふ〜ん」

「石田さんが引き継いだら、ひらめくんも忙しくなるね」

ひらめは、石田さんを手伝いながら仕事を教えてもらっている。
石田さんが忙しくなれば必然的にひらめも仕事量が増える。

会議を終え、先輩たちが続々と戻ってくる。
ひらめが、戻ってくる先輩たちをうかがっていると石田さんから衝撃の一言が告げられた。

「ひらめ、頑張れ!」
「・・・へ?」

「ぷっ」

隣の席に座っている事務の白倉さんが思わず噴いた。

「ごめん・・・。可笑しい・・・。石田さん、ひらめくんが大竹さんのプロジェクトを引き継ぐの?」
「そうなった」
「ウケる・・・」

(白倉さん、その攻撃は地味に凹みます・・・)

「え〜っ!? びっくり! 嫌。無理。駄目。他にいっぱい仕事できる人いるじゃん」

「ひらめ・・・。思った以上に反応が良いな。とりあえず、保留にはなったけど、ひらめが第一候補」

石田さん曰く、大竹さんのプロジェクトは、片手間でできる程の規模ではない。そして部内には、このプロジェクトに専念できる人間がいない。
他プロジェクトの調整が上手くいけば、その人が引き継ぐけど、調整が上手くいかなかったら最悪、プロジェクトを抱えてない『ひらめ』の出番。

定時間際の給湯室で、ひらめが先輩女子社員たちに大爆笑される。

「あはははっ。可笑しすぎる」
「でしょ? あり得ないすよね? まさかの『ひらめ』って感じでしょ?」

「断り方が子供じゃん。ひらめくんらしいけど・・・」
「仕事を断るなんてあり得ない・・・。クビ案件だね・・・」

「ヤバいかな・・・」

「やっちまったな。まあ、ひらめくんらしくて面白い」

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