平成サバイブ 第一四話「まだまだ落ち着けないから、彼女はいらない」

平成サバイブ

「もしもし、ひらめくん? 聞いてる?」
「うん。聞いてるよ」

「今週の金曜日、分かった? 待ってるからね。じゃあね」

恭子からの同期会のお誘いの電話をひらめは不機嫌そうに切った。

(この前、集まったばっかりじゃん。面倒くさい・・・)

「「お疲れっ!」」

入社して初めての大型連休明け。そろそろ同期の中でも『仕事ができる』アピールをする奴が現れる。

そして反対に、社会の荒波に揉まれ、仕事がツラいとボヤく『ドロップアウト予備軍』も生まれる。

ひらめは、自分に期待もしていないし、会社から期待もされていないので、どちらにも属していない。

ただ、仕事をしているアピールをする人間が嫌でなんとなく避ける。
必然的に下座の『ドロップアウト予備軍』と飲むことになる。

そして、上座の仕事をしている人間たちは下座の人間をさげすみ、上から目線で話してくる。

残酷ざんこくな社会だけど、それが現実だ。

下座は仕事の話を絶対にしない。ひらめが下座のみんなに課したルール。

仕事を忘れて楽しむ。

ひらめの隣に座ったさやかの距離が近い。

ひらめは、女子の匂い、体温を感じ、心臓がバクバクしていた。

「お疲れ。またね!」「じゃあね!」

前回の帰宅組より人数が増え、参加者の半数以上が駅に向かう。

ひらめが、駅で電車を待っていると真央からショートメールが入った。

『新宿、南口、帰るなよ』

直ぐに返信する。

『東南口、下の喫煙所にいるよ』

電車に乗ると酔ったさやかが、小動物のようにひらめの腕に絡みついてくる。

「ひらめくん。お楽しみのところ申し訳ない。さやか、ちょっとごめんね」

デリカシーのカケラもない恭子が、至福のひとときに割り込んでくる。

「彼女いるの?」
「いないよ」

「実は、何人もいたりして」
「何が言いたい?」

「彼女ができると落ち着くのか、このままなのか、女子からしたら不安じゃん?」
「彼女がいても、いなくても変わらない」

「その彼女ってヤバくない? 普通は、無理だよ。彼氏が他の女子とイチャついてるんだよ? あり得ないじゃん?」
「待て待て。いつ俺が女子とイチャついてた?」

「えっ? いま」

恭子は、この間も一度も離れることがないダッコちゃん人形状態のさやかに視線を送る。

「まあ、いいや・・・。彼女作らないの?」
「そんなの成り行きでしょ? 作るといって作れるもんでもないし」

「なんかムカつく言い方・・・」
「はははは。実際問題、しばらく、できないと思う。金ないし・・・」

「一人暮らしだっけ?」
「うん。さらに『ひらめ、クルマを買う』みたいな」

「マジで言ってる? バカじゃん」

「ひらめくん、クルマ買ったの?」
「うん。中古だけどね」

「今度、乗せてよ」
「うん。いいよ。連絡する。ケータイ教えて」

ひらめとさやかのやり取りをニヤニヤしながら恭子が見ている。

ひらめが視線に気づく。

「なに?」
「いや、ケータイ番号聞き出すの上手いなあと思って、見てただけ」

ひらめは、新宿駅で女子たちと別れ、東南口の喫煙所に向かう。

直ぐに真央がやってきた。

「行こうか」
「うん」

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