平成サバイブ 第一四話「出会い3」

平成サバイブ

「ご案内します」

(おお、営業っぽい)

「いらっしゃいませ〜」

ひらめは窓際の席に案内された。席につき、コーヒーを頼む。

「店長の豊田です。本日はロードスターをお探しですか?」
「あっ、決めてはいないんですよ」

(てっきりお姉さんが相手をしてくれると思っていたのに・・・)

「新しいロードスター(NB)も見ました?」
「いえ」

「ひとつ前のロードスターも良いですが、新しい方が剛性も上がり、エンジンも一・八リッターになって走りが楽しくなっていますよ」
「はあ」

「今なら勉強しますよ。どうですか、見積だけでも見てみますか?」
「はあ」

「車は絶対に新しい方が良いですよ。機械としての性能もそうですが、安全性能も上がっているし、デザインも全然、洗練されていますよ。特にロードスターの場合、初代に比べ、内装が全然違う。初代はなんというか安っぽいんですよね。新しいロードスターはマツダの自信作ですよ。初代の良さを残しつつ、正常進化しています。一〇年前のデザインと今のデザインじゃ断然、今の方がおすすめですよ。車好きなら、新しい車にどんどん乗り換えるべきですよ。新しいロードスターの見積、作ってきますね。その間にこちらにご記入をお願いします」

来店者記入用紙を渡され、店長は事務所へと足早に去っていった。一〇年前の技術で作った車と最新の技術で作った車じゃ性能が上がっているのは当然だ。ただ、ひらめは納得ができなかった。

「どうぞ」

ひらめが用紙に住所、電話番号を書き込んでいると、さっきの女性がコーヒーを運んできた。

「店長、新しい(NB)ロードスターを売りたいんだよ。だまされないでね」

女性はかがみ、ひらめの耳元でささやきながらカップを並べ去っていった。入れ替わりで店長がやってきて、記入済みの用紙を確認する。

「お待たせしました。え〜と、永井さん。永井さんは学生さんですか?」
「あ、社会人です」

「あ〜そうなんですね。うちの飯島とは知り合い?」

「飯島さん?」
「あのロードスター好きの」

店長が女性の後ろ姿に視線を移す。

「あ〜、知り合いではないです。ロードスターを見ているときに声を掛けられたんです」

「飯島、派手な黄色の初代ロードスターに乗っているんですよ。また車検を通すみたいな話をしているけど、もう十分乗ったんだから乗り換えた方が良いと思うんですけどね。あっ、ごめんなさい。余計な話でしたね」

ひらめは、渡された見積書を確認した。新しいロードスター(NB)の見積額は乗り出しで二三〇万円。

(新車だとそんなもんだよな・・・)

「新しいロードスターは初代のロードスターの良いところは残しつつ、安全性能、走行性能を進化させています。ミッションも初代は五速でしたが、六速になっていますし、初代にはなかったエアバッグも、運転席エアバッグだけではなく、助手席にも標準装備になっています。ABSもオプションでつけれますよ。見積には入れてませんが。あと、エンジンも一.八リッターになったのでパワーもありますしね。今ならこの金額でやります。結構、頑張ったんですよ。他にもディーラーオプションもサービスできます。どうですか?」

「中古の赤いロードスターも見積いただけますか?」

「いや〜。あの車も安いし良いクルマなんですけど、走行距離も伸びてるし、九年落ちですからね。新しいロードスターの方が良いですよ。ここだけの話なんですが、初代は結構、あちこちに問題があって、新しいロードスターは改善しているんです。これから長く乗るなら新しいロードスターの方が良いと思いますよ」

「クラシックレッドのロードスターの見積書です」

差し出された見積書を受け取りながら、見上げると飯島と目があった。視線で見積書の確認を促す。

車体の販売価格、税金、メンテナンス費用を加えて五五万円。

「ちょっと考えさせてもらって良いですか?」

「今月中に契約をして頂ければ、この見積額でやらせて頂きます。永井さんの担当は、飯島にしますので、何かあったら飯島にお伝えください」

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