平成サバイブ 第二九話「恋人同士に必要なものって、何だ?」

平成サバイブ

「生きててよかった〜」
「うん。技術の進歩ってすごいね」

二人は冷房の効いた新宿の喫茶店でカキ氷を食べる。

「ひらめ、ブルーハワイ? ブルーハワイ食べてる人、初めて見た。カキ氷といえば、メロンかイチゴじゃない?」
「うそ? ブルーハワイがなかったらレモン、なかったらメロンだよ」

「ちょっと待って。レモン?」
「黄色い奴、知らない?」

「話作ってる? 騙そうとしてる?」
「いや、あるでしょ? えっ知らないの?」

「知らない。そもそも、カキ氷なんて子供のとき以来だよ」
「マジかっ。夏といえば、カキ氷。これを食べないと夏が来ないよ」

他愛もない話で二人は、お互いの価値観を少しずつ、すり合わせていく。

「それにしても、夏のオープンカーはキツいね。よくみんな耐えてるよね」
「真央も耐えてたよ。なんか、暑くて死にそうでも、涼しい顔で乗ってないとカエルちゃんに悪い気がして・・・」

「分かる。これまでに諸先輩方が築き上げたオープンカーのイメージを俺如きが壊しちゃいけないような気がして耐える」

「カエルちゃん、普通じゃないけど真央は好き。快適じゃないけど、一度乗ったら他のクルマじゃ満足できない」
「うん」

「ディズニーランドのときの女の子も手を振ってくれたし・・・。かわいかったな」
「あのときは、真央さんもかわいかったな。また行こうよ」

「ねえ、ひらめ。あのときの約束覚えてる?」
「・・・約束? 何かしたか? えっ? 約束、真央さん、俺、浮かれてて何も覚えてない・・・。なんの約束したっけ?」

「真央の彼氏って話したじゃん!」
「ああ『おっぱい禁止』ね。した、した」

「あのときのルール覚えてる?」
「おっぱいで興奮しない。と真央って呼ぶ・・・そうね。真央は俺の彼女。ね、真央」
「うん」

「出ようか?」
「うん。ちょっと寒くなってきた」

二人で腕を組みながら新宿御苑しんじゅくぎょえんまでブラブラと歩く。

「真央、ちょっといい?」
「うん」

「俺、真央に甘えちゃう・・・かも知れない。赤ちゃんプレイ的な・・・」
「待て待て。お天道様がこんなに高いうちから、いきなり下ネタか? 確かに真央は全てを受け止めるって言ったけど、そんな性癖を今ここで告白されて真央は、どう対応すればいい?」

「まあ聞いてよ。SかMかでいったら、Sでもあるし、Mのときもあると思うし、ボケかツッコミかといえば、ボケのときもツッコミのときもある」
「・・・。なにが言いたい?」

「なんかさ、俺は真央が落ち込んだときははげましてあげたいし、悲しいときはなぐさめてあげたい。でも、俺が弱ってるときは、真央に頼らせてほしい」
「うん、真央もお互いに支え合うような関係になりたい」

「良かった・・・」
「・・・」

ひらめは新宿御苑の木陰に腰を下ろし、眩しそうに芝生で遊ぶ家族連れを眺める。真央もひらめの隣に腰を下ろす。

「俺は、隠さずに何でも真央に話すよ。誰にも話せないことも全部、話す。俺は真央のことが好きだから真央を信じる。それで嫌われたら、俺が悪かったと思う・・・なんか、言葉にできないんだけど・・・そんな感じ」

真央はひらめのクビに手を回し、ハグをする。

「ありがと。真央も頑張る」
「・・・」

「真央、おっぱいが顔に当たって変な気分になってきた」
「変態っ!」

「いいじゃん。恋人同士でしょ?」
「いやいや、恋人同士でもおかしいだろ?」

「あはははは。変われないね」
「うん」

真央は変われないと言っているが、ひらめは大きく変わった気がしていた。これまで、誰にも見せなかった本当の自分を真央には見せてもいいような気がしている。それは真央が、ひらめのことを何の疑いもなく、真っ直ぐ信じてくれているというのが分かったからだ。

そんな真央の気持ちに、ちゃんと答えたいと思う。

いきなりは難しいけど、少しずつ変わればいい。

第一部・完

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