平成サバイブ 第八話「同期会2」

平成サバイブ

新宿駅の構内をダルそうに歩いていると後ろから急に腕をつかまれた。

(うわ〜面倒くさい・・・)

派手な見た目のひらめは、学生時代からよく絡まれる。

そっとポケットの中でジッポを握りしめ、一、二の三・・・。
振り向くと身長二メートル体重一〇〇キロ超えの戦闘員。がいれば良かった。

大きな目で、ひらめをにらむ真央がいた。

「なんだ。真央さんか・・・。どうした? 迷子?」

ひらめの殺気を感じた真央がすくむ。

「ごめん。びっくりした? えっ何? ごめん・・・。ひらめくんだよね?」

真央を確認したひらめから、殺気が消えていく。

「うん。どうしたの?」

「・・・飲み行こう」

「用事があったんじゃないの?」
「うん。『ひらめくんと話す』という用事ね」
「意味が分からん」

「いいじゃん。行こうよ」
「さやかちゃんに電話する? まだいるんじゃないかな」

「呼ばないで。さやかが来たら飲めないじゃん」
「ああ、そうか・・・」

真央が少し照れながら、上目づかいでひらめを見上げる。

(かわいい過ぎる・・・)

女子の上目づかいは犯罪だと思う。簡単に使えないように法律を作った方がいい。

二人は、前回と同じショットバーへ入った。

「どうした? 相談? 金以外なら何でも相談に乗るよ」
「この前の続き」

(そうだよね・・・)

「色々と考えたんだけど、私はやっぱり、ひらめくんに本当のことを言って欲しい」

「真央さん。俺なんて信用しちゃダメだよ。本当は腹黒くて、汚くて、エッチなことしか考えてない・・・かもしれない」
「いいよ。・・・ホテル行く?」

ひらめは、予想をしてなかった真央の反応に狼狽うろたえる。

「えっ? ホテル? 何しに?」

「うそ。私はそんなに軽くない」
「・・・」

「どうして、私と本気で向き合ってくれないかを教えて欲しい・・・」

(面倒くさい。それが苦手なんだよ・・・)

「真央さん、この間も言ったけど、僕は誰とも本音で話そうとは思わない。うわべだけの薄っぺらい関係でいいんだよ」

「どうして?」

「俺は本性というか、本当の姿は誰にも見せたくない。演じている『ひらめ』を否定されても、痛くもかゆくもない。だけど、大切にしている本当の俺を否定されたら凹む。間違いなく、凹む。だから、本音の部分は絶対に誰にも見せたくない。見せなければ否定もされない。俺は強くないから、そうやって自分を守っている」

「それは私だって一緒だよ。誰にも本当の姿なんて見せられない。親にも」
「うん。そういうことなんだよ」

「それでも、私はひらめくんと本音で話したい」

(その真っ直ぐな目が苦手なんだよ・・・)

「分かった。俺も思ったことを話す。本音でね。でも、誰にも言わないって約束して。俺も真央さんの言ったことは誰にも話さない」

「分かった。約束する」
「うん」

「良かった。すごく悩んだんだからね・・・」
「何が?」
「男子に面と向かって『嫌い』なんて言われたことなかったから、凄く凹んだ・・・」

「『嫌い』とは言ってないじゃん。『苦手』とは言ったけど・・・」
「同じでしょ?」

「まあ、同じか」
「でも良かった。話ができて」

「真央さん。俺は本音で話すけど、真央さんのことが苦手なのは変わってないよ・・・」
「大丈夫。真央はいい子だから直ぐに慣れるって。惚れるなよ!」

暑苦しくて苦手な女だけど、話していて不快ではない。

ひらめは、真央をマジマジと観察する。

「ん? 何?」
「真央さんが、かわいいから見惚みとれていた」

「うん。ありがと」

「真央さんと付き合いたい」
「いきなり、なに言ってるの? さっきまで苦手って言ってたのに・・・。展開が早い。ないない」

「俺、真央さんの理想の彼になるよ。真央さんが求める彼氏を完璧に演じる自信がある」
「なんか、それが嫌なんだよ。騙されている感があって・・・」

「そんなことないよ。誰だって自分の都合の良いようにキャラを演じているでしょ。真央さんだって会社では酒が飲めないフリをしてんじゃん。一緒だよ」

「真央とひらめくんは違う。絶対に違う!」

「一緒だよ。真央さんだって、会社では『しっかりした新人』のフリして、高い評価をもらおうとしてるじゃん? 本当は、全然そんなことないのに」
「・・・」

「真央さん、気づいていないかもしれないけど、さっきから一人称が『真央』になっていて、ちょっと子供っぽいけど、かわいいよ・・・。俺は、いまの真央さんの方が好き・・・」

「ありがと・・・」

真央が顔を真っ赤にして恥ずかしがる。
軽口に素直に反応する娘に愛おしさを感じる。

「とりあえず、今日はひらめくんと本音で話せて良かった。ありがとう」

「騙されてるかもよ?」
「それはない。真央には分かる。素直に話してくれてるじゃん。ただ思った以上にゲス野郎だったけど・・・」

「よし。帰ろうか」
「うん」

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