少しプライベートな話になりますが、僕は長年勤めた会社を、予期せぬ形で離れることになりました。
50歳という年齢で、次にどうすればいいのか。これからの生活費は大丈夫なのか。そうした不安が、当時は僕の心に渦巻いていました。
でも、心配しないでください。
実は、会社都合で退職した場合、僕には「失業保険」という心強い味方を得ることができます。この制度をうまく活用すれば、お金の心配から解放され、心にゆとりを持って次の仕事を探すことができるのです。
この記事では、失業保険が50代の私たちにどう役立つのか、生活費のシミュレーションを交えながら、紐解いていきたいと思います。
会社都合退職、失業保険は心強い「安全網」

失業保険、正式には「雇用保険の失業等給付」といいます。これは、働いていた人が失業したときに、次の仕事が見つかるまでの生活を支えてくれる大切な制度です。
ご存じの通り、退職には大きく分けて2つのパターンがあります。
そして、このどちらで退職したかによって、失業保険の給付内容は大きく変わってきます。僕は紆余曲折ありましたが、最終的には、会社都合により退職をしました。
会社都合退職の場合、給付が手厚くなります。これは、国が「会社側の都合で、本人の意思に反して職を失った」ことを考慮しているからです。
具体的に、どのような点が優遇されるのでしょうか。
1. 待機期間なし、すぐに受け取れる
自己都合退職の場合、給付が始まるまでに2か月間の給付制限期間があります。この間は、収入が途絶えてしまうため、どうしても焦りが生じます。
しかし、会社都合退職の場合は、この給付制限がありません。手続きを済ませれば、7日間の待機期間を経て、すぐに失業保険を受け取ることができるのです。
2. 給付日数が圧倒的に長い
失業保険の給付日数は、勤続年数と退職時の年齢、そして退職理由によって決まります。50歳以上で会社都合退職の場合、給付日数はかなり手厚く設定されています。
例えば、勤続20年以上の場合、なんと最長で330日分もの給付を受けることができます。これは、およそ11か月分に相当します。
3. 精神的な余裕が生まれる
お金の心配が少なければ、心にゆとりが生まれます。焦って「どこでもいいから」と仕事を探すのではなく、「本当にやりたいこと」「自分の強みを活かせる場所」をじっくりと見極めることができます。
この精神的な余裕こそが、失業保険の最大のメリットかもしれません。
いくら貰えるか、具体的な金額を計算してみた

では、実際にどのくらいの金額が受け取れるのか、具体的に見ていきましょう。
失業保険の給付額は、「基本手当日額」という金額をもとに計算されます。基本手当日額は、退職直前の賃金(賞与や残業代、手当などを含めた総支給額)によって決まります。
僕は退職時の給与が50万円ちょっとでした。
この条件で、最長330日分を受け取ると仮定すると、総額は次のようになります。
8,370円 × 330日 = 2,762,100円
なんと、約276万円にもなります。
そして、もう一つ重要なポイントがあります。それは、失業保険は「非課税」であるということです。
通常、給与からは所得税や住民税が引かれますが、失業保険は税金がかかりません。
つまり、先ほどの276万円は、そのまま手元に入ってくるお金なのです。
ハローワークの手続き

失業保険を受け取るためには、ハローワークでの手続きが必要です。初めてだと少し不安に感じるかもしれませんが、流れを把握しておけばスムーズに進められます。
ステップ1:必要書類を準備する
会社から「離職票(1・2)」と「雇用保険被保険者証」を受け取ります。これらの書類は、失業保険の手続きに必須です。
僕の場合、退職後、10日で自宅に郵送されました。調べてみると10日〜2週間程度かかるのが一般的なようです。
とはいっても、この10日間はすごく長く感じました。もちろん、最終の給料振り込みがあるので、金銭的の不安というより、精神的な不安が大きかったです。
ステップ2:ハローワークで求職の申込みをする
お住まいの地域を管轄するハローワークに行き、求職の申込みを行います。このとき、以下のものを持参しましょう。
雇用保険被保険者証と離職票(1・2)は退職した会社で用意してくれました。
僕が調べた時は、以下のものも持参するように書かれていたのですが、上記3点があれば、手続きができました。
窓口で手続きをすると、失業給付の受給資格が決定されます。
ステップ3:雇用保険受給者初回説明会に参加

ハローワークで、初回の手続きをすると「雇用保険受給者初回説明会」に日程が通知されます。
約40人程度の人が集められ、失業手当や再就職手当についての説明を受けました。わからないことは聞けば教えてくれるので、だいぶ不安が減りました。
6月末日で退職し、書類が揃ったのが7月10日。7月11日にハローワークで手続きをしたのですが、僕が参加した「雇用保険受給者初回説明会」は7月26日でした。
ステップ4:失業認定日にハローワークへ
受給資格が決定したら、4週間に1度、指定された「失業認定日」にハローワークに行きます。
この認定日に、現在の求職状況を報告し、「失業状態にある」と認定されれば、その4週間分の失業保険がまとめて振り込まれます。
僕の失業認定日は8月8日でした、そして、8月13日に初回の失業保険が振り込まれました。
4週間で考える、ゆとりの生活プラン

失業保険は、4週間に1度のペースで振り込まれます。このサイクルに合わせて生活費の計画を立ててみました。
先ほどのシミュレーションで、日額8,370円と仮定すると、4週間分の振込額は次のようになります。
8,370円 × 28日 = 234,360円
このうち、どのくらいを生活費に充てられるか考えてみましょう。
実は、失業保険とは別に、自分で支払う必要があるお金があります。それは、「国民健康保険」と「国民年金」、そして「住民税」です。
これらの金額は、住んでいる地域や退職前の収入によって異なりますが、ここではおおよその目安として計算してみます。
| 項目 | 4週間あたりの目安金額 |
|---|---|
| 国民健康保険 | 約23,000円 |
| 国民年金 | 約15,000円 |
| 住民税 | 約14,000円 |
| 合計 | 約52,000円 |
この合計金額を、振り込まれる失業保険から差し引くと、実際に自由に使える生活費が見えてきます。
234,360円 – 52,000円 = 182,360円
つまり、約18万円が、4週間(およそ1か月)で自由に使えるお金になります。
18万円でどんな生活ができる?
この金額で、無理なく生活を送るためのモデルケースを見てみましょう。
| 項目 | 金額(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| 家賃・住宅ローン | 70,000円 | 固定費の大部分を占めます |
| 食費 | 35,000円 | 1日あたり1,250円で計算 |
| 光熱費(水道・ガス・電気) | 10,000円 | 節約を意識したいところ |
| 通信費(スマホ・ネット) | 8,000円 | 格安SIMの検討も |
| 交通費・雑費 | 5,000円 | 面接や外出時に |
| 日用品・消耗品費 | 5,000円 | 日々の買い物に |
| 緊急予備費 | 10,000円 | 医療費や急な出費に備えて |
| 合計 | 143,000円 |
この生活プランであれば、18万円の収入に対して、約3.7万円の余裕が生まれます。この余裕分は、次の仕事に向けての貯金に回したり、資格取得のための勉強代に充てたりすることも可能です。
どうでしょう? 十分、ゆとりをもって生活できると思いませんか。
50代からの転職、焦らずじっくり向き合う時間

失業保険は、単にお金をもらうための制度ではありません。これまでの働き方や、これからの人生についてじっくりと考えるための「時間」を与えてくれるものじゃないでしょうか。
50代からの転職は、若い頃のようにスピード勝負ではありません。これまでの経験やスキルをどう活かすか、これからの10年、20年をどう生きていくかを考える大切な時期です。
失業保険の給付期間を有効活用すれば、以下のことができます。
1. 徹底的な自己分析
「自分は何をしてきたのか」「何が得意なのか」「どんな働き方がしたいのか」。今まで仕事に追われて考える暇がなかったことを、じっくりと掘り下げてみましょう。
2. スキルの棚卸しと再構築
これまでの経験を職務経歴書にまとめる作業は、自分を客観的に見つめ直す良い機会です。さらに、足りないスキルがあれば、資格取得や専門講座を受講する時間も確保できます。
3. 幅広い情報収集
求人情報を見るだけでなく、業界の動向や企業文化など、多角的に情報収集をすることで、本当に自分に合った企業を見つけ出すことができます。
最後に

50歳での退職は、確かに大きな転機です。しかし、それを「終わり」と捉える必要はありません。むしろ、新しい人生のスタート地点に立ったのだと前向きに捉えてみてはいかがでしょうか。少なくとも、僕はそう思っています。
失業保険は、その新しい一歩を踏み出すための「生活の安全網」です。この制度をうまく活用すれば、お金の不安を抱え込むことなく、心穏やかに次のキャリアを築く準備ができます。
焦らず、じっくりと。あなたは、これまでの経験と知恵を活かし、きっと新しい場所で活躍できるはずです。
僕も自分が活躍できる場所を真剣に探してみようと思います。
(了)



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