クロスカブ110を買って、後悔したことはあるかと聞かれれば、僕は正直に『ある』と答える。
坂道は遅い。幹線道路では追い越される。高速道路にも乗れない。収納もない。冬は寒く、夏は暑い。長距離を走れば、お尻が痛くなる。
でも、不思議なことに、今でもこのバイクに乗り続けている。
この記事では、クロスカブ110を乗り続けて感じた「後悔ポイント」と、それでも手放せない理由について、正直に書いていく。
クロスカブ110で後悔すると言われる理由
欠点を隠す気はない。なので、まず事実を並べる。
遅い。 幹線道路では軽自動車に追い越される。信号からの出だしは特に遅く、隣の原付にすら先を越されることがある。最高速は約85kmだが、快適に巡航できるのは60km前後だ。
高速道路に乗れない。 原付二種なので、高速道路と自動車専用道路は走れない。ツーリングで「この道を行けば早いのに」と思う場面は、確かにある。
坂道が苦手だ。 急坂では速度が40kmを下回ることもある。他車が後を走っていると、少し気まずい。荷物を積んでいるときはさらに顕著で、エンジンが唸り声をあげながら登っていく。
積載が少ない。 標準状態では荷物をほとんど積めない。リアボックスやキャリアを後付けするのが前提の設計だ。初期費用として、それなりの出費を覚悟したほうがいい。
不便だ。 総じて、不便なバイクだ。現代のバイクが持つ快適装備——ウインドスクリーン、大容量の収納、強力なエンジン——クロスカブ110にはそのどれもない。
僕はクロスカブ110が好きだけど、これは全部本当のことである。
クロスカブ110は通勤や長距離で疲れる?
疲れる。これも正直に言う。
風をもろに受けるので、冬の通勤は寒い。手袋をしても、信号待ちのたびに指先が冷えていく。夏は夏で、ヘルメットの中が蒸れる。シートのクッションは薄めで、100kmを超えるとお尻に来る。
長距離ツーリングは、こまめな休憩が前提だ。コンビニに寄りながら、缶コーヒーを飲みながら、少しずつ進む。それを「疲れる」と取るか、「それがいい」と取るかで、このバイクとの相性が決まる。
ただし、気軽さはある。小さくて軽いので、狭い道も平気だ。駐輪場所にも困らない。燃費は50〜60km/Lほど出るので、財布への負担も少ない。
大型バイクのような威圧感がなく、初心者でも気軽に乗れる。
クロスカブ110を買って後悔する人
合わない人はいる。
速さを求める人には向かない。「もっと速いバイクにすればよかった」という後悔は、時間とともに大きくなる。効率を最優先にする人にも向かない。移動時間を「無駄」と感じるなら、このバイクは常にストレスを生む。
快適さ最優先の人も、合わないかもしれない。クロスカブ110は、快適に走るバイクではなく、楽しく走るバイクだ。その違いは、乗り始めてすぐに分かる。
所有感だけで買う人も、少し危ない。見た目に惹かれて買い、乗ってみたら不便で、だんだん乗らなくなる——そういう人を、何人か見てきた。このバイクは、乗り続けることで良さが分かる類のものだ。
それでもクロスカブ110を手放せない理由
60kmで走ると、景色が見える。
これがすべてだと思っている。
速いバイクでは、世界が流れていく。景色は「背景」になる。だがクロスカブ110は、世界を「見える速度」で走る。秋口の金木犀の匂い。雨上がりのアスファルトの湿った臭い。夕暮れの空が、オレンジと紫の間で迷っている瞬間。そういうものが、ちゃんと視野に入ってくる。
遠回りをしたくなる。これも不思議な感覚だ。速いバイクに乗っていたとき、遠回りをしたいとは思わなかった。効率よく走ることが、いつの間にか目的になっていた。クロスカブ110に乗ると、知らない道を曲がりたくなる。どこに続くか分からない道を、ただ走りたくなる。
一人の時間が、豊かになる。誰かと競う必要がなく、誰かに追いつく必要もない。ただ走ること自体が目的になる——そういう乗り方が、このバイクには似合う。孤独を楽しめる人に、クロスカブ110は深く刺さる。
クロスカブ110は「効率」ではなく「余白」のバイクだ
現代人は、無駄を楽しめなくなった。
タイパという言葉が生まれて、人は移動中にも何かをしなければならない。音楽を聴き、ポッドキャストを聴き、それでも「時間を無駄にしているのでは」と思う。
移動は目的地への手段に成り下がり、その途中にあるものは全て「無駄」になった。
クロスカブ110は、その感覚に静かに抵抗する乗り物だ。
遅い。だから、急げない。急げないから、遠回りができる。遠回りをするから、寄り道ができる。寄り道をするから、予定にない何かに出会える。
コンビニの駐車場で見知らぬおじさんと話したり、夕焼けが綺麗な場所でしばらく止まったり。そういう「余白」が、このバイクには内蔵されている。
高性能なバイクには、余白がない。速すぎて、通り過ぎてしまう。
まとめ|クロスカブ110は後悔する?しない?
後悔するかどうかは、何を求めるかによる。
速さ、快適性、積載量、高速道路——それらを求めるなら、クロスカブ110は答えてくれない。別のバイクを選ぶべきだ。それは間違いない。
でも、急がなくていい時間を求めるなら…景色を見ながら走りたいなら…誰かと競わずに、自分のペースで道を選びたいなら。クロスカブ110は、人生レベルで刺さるバイクになる。
不便だ。遅い。疲れる。それは全部、僕が感じたことだ。
でも、このバイクを選んだ人は、不便さと引き換えに、何か別のものを手に入れている。それが何かは、乗り始めてしばらくしてから、じわりと分かってくる。少なくとも僕はそうだ。
クロスカブは、性能で選ぶバイクではない。生き方で選ぶバイクだ。
そして、少しでも快適に乗るために自らカスタマイズをするのも、このバイクの楽しみだと僕は思う。


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